顔面麻痺

不意の再発

2023年12月23日、目覚めると、目が回り立てない自分の異変に「また脳梗塞になってしまったかもしれない。困ったことになった」と思いました。
妻の助けで2階の寝室から、1階のリビングのソファーに横になりながら、自分を観察する冷静な私がいました。
めまいがひどく立つことは危険だが、右手にしびれがあるだけで、四肢は今までどおり動くようだった。

緊急搬送

10年前もお世話になっていた総合病院に搬送され、「MRIを撮る」、「点滴針がうまく入らず、苦戦する新人医師とベテラン医師の会話」、「私の目が、寄り目ができないのを、面白がる女医」。そんな状況でさえ、どこか客観的に楽しんでいる私がいました。

脳神経外科医からの説明

脳神経外科医の説明によれば、今回の梗塞は中脳の動眼神経付近で起こった。目の障害なので時間がかかるでしょう。10年前の梗塞はひどい障害が出たでしょうが、今回のところは、いろいろな障害が出るところではない。10年前の梗塞で壊れた脳細胞は、脳の形を保てなくて崩れている。という説明を妻が受けました。
私は妻からの話に「脳が形を留めないということは、どういうことなのか」今回の梗塞より気になりました。
確かに10年前は、ひどい障害を起こしましたが、少しずつ改善し、現在も続いています。
それは、脳の中では損傷した細胞とは関係なく、新しい神経ネットワークが、本来の機能を持たない細胞と、手を取り合ってくれた証ではないか。
これまでの、手探りだった私の取り組みが、確信に変わった瞬間でした。

退院

医師が不思議がるほど回復し、リハビリは正月休みに入る上、病院も手薄になるため退院することになりました。
初めての入院と違い、なぜか入院生活の色々な出来事を楽しめました。
それは闘病経験があったためでもありますが、手足が自由に動かせたことが大きかったと思います。
動けないという「恐怖」や「喪失感」は動物としての命を失ったということと同じだった。しかし、今回は、手足がそれまで通りだけで、心強かった。

正月は我が家で

入院中に気づいていましたが、左顔面麻痺がだんだんひどくなってきて、顔や首の左半分が少し熱を持って痛くて、額は不自然につるつるになり、瞬きできず目は見開いたまま、正月のお祝いに訪れてくれる人に、異様な印象を与えてしまうことが、何より辛いことでした。
点眼薬で渇きを防ぎ、首には湿布を張ってしのいでいました。

受診日

2024年1月6日の受診日。
自分の状態や私なりの対処法を話し、主治医に相談しました。
返ってきたのは「他にない」という冷淡な一言。
専門外と言わんばかりの態度に、「きっと自分に合う治療は、標準治療の枠の外にあるかもしれない」。
私は自分で探すしかないと確信しました。

私の顔面麻痺対鍼灸師

顔面麻痺の当事者

私の知人にも、何人かの顔面麻痺経験者はいます。
当人は顔という隠せないアイデンティティが、変わってしまうということは、とても自尊心が傷つき恥ずかしく、簡単には言い表せません。
私は脳梗塞が原因と分っていますが、原因も分からず治療法も分からない方がほとんどです。
本人なりになんとかしようと、色々と手を尽くすがどうにもならず、自然に任せているしかないと、諦らめるのが現状ではないでしょうか。

希望を託す

2024年1月16日、自費リハビリに、重い足取りで希望を託し受診しました。
ここは、再発前からお世話になっていました。私自身、初体験だった鍼灸は、自立神経治療を中心におこなっていましたが、熱意に満ち溢れた施術に信頼しておりました。
その鍼灸師が、私の顔を見るなり、そわそわと落ち着かない様で、真剣に治療法を練ってくれました。事前にメールで相談していた以上に、手ごわいと感じていたのでしょう。
私はその様子を見て、「真剣になんとかしようと考えている。ありがたい」と心が支えられるような感じを得ました。

施術内容

30分顔の左半分にたくさんの針を刺し、その中に電気鍼入れて、パルス通電致しました。その後首、頭、肩を中心に無数の針を刺しました。一時間の施術でした。
最後に鍼灸師は、瞬きが左右で同じようになったことと、暴走状態の姿勢筋をなだめましたと、優しい表情で私に伝えてくれました。
鏡を見せてもらうと、異様な雰囲気をまとっていた顔に、笑顔が戻っていました。
帰りは妻と、ここまで来て良かったと、安堵があふれていました。
その日の夜はよく眠れ、日を覆うごとに、どんどん回復して行きました。

施術の狙い

表情筋(顔の筋肉)の自然なトーン(張り)が失われて、左側だけ無表情となり違和感の原因となりました。
休止状態にある筋肉に、鍼を通じて微妙な電気を流します。電気刺激で筋肉をピクピクと動かします。これにより筋肉のポンプ作用が働き、血流が改善されます。また、眠っていた神経と筋肉のつながりを、呼び起こす「再教育(リハビリ)」のような結果もはたします。
人間の体には、足の裏からふくらはぎ、背中、首の後ろを通って、後頭部を超え眉毛の上(おでこ)までつながる筋膜ラインがあります。
背中や首、後頭部がガチガチに緊張すると、この筋膜が後ろに引っ張られます。
顔面麻痺で瞬きができなくなった時、実は原因は『顔』だけではありませんでした。
私の体感では、背中や首、後頭部から頭頂部にかけて、まるで見えない力で顔の皮を後ろに引っ張られているような感覚がありました。この『後ろからの過剰な引っ張り』のせいで、おでこはピンと張ってツルツルになり、まぶたも閉じようとする動きが、邪魔されていたのです。
治療では、この後ろ側の緊張をほぐすために、頭頂部や後頭部、首へ集中的に針を打ちました。いわば、後ろに引っ張っていた『重り』を外していく作業です。その結果、顔全体の突っ張りが取れ、ようやく自然に瞬きができるようになりました。

私はラッキーだったのか

私の体験がお役に立てばいいと思い、顔面麻痺に悩まされている友人に話した時「鍼も試したけど、あんなの、効かない。全然ダメ。」と言われました。
私なりに分析しました。
・長いリハビリの中、たまたま鍼治療に馴染みがあった。
・顔面麻痺の症状がひどく、早く楽になりたかった。10年前も軽い右顔面麻痺がありましたが、その他の障害の方が重要で、対処することは考えませんでした。
・発症からすぐに、私にとって適切な施術と情熱を持った鍼灸師の施術を受けることができた。もし2~3ヶ月して、障害が固まっていたならどうだったろう。
すべて結果論ですが、いろいろな回り合わせや、ご縁のおかげがあったからです。
医学的にエビデンスが整い、適切な治療方法が確立すれば、多くの人が救われる道が、開けるのかもしれません。

脳幹・全身のコントロールセンター

10年前の脳幹梗塞では、右麻痺で右顔面麻痺。
今回の再発では、右手にしびれがあって左顔面麻痺。
入院中に看護師にこの話をしたら「だから脳幹は難しいのよ」と返されました。
2回ともほとんど同じような場所の梗塞でも、全く違った障害が出ると感じました。
10年前は「あなたの梗塞場所は、普通なら呼吸が止まって、死んでいても仕方ない」と言われ。
今回も「心電図テレメーター」をつけられ厳重監視されていました。
脳幹は、手の親指くらいの大きさらしいが、非常にデリケートで、命に直結する大事な場所「全身のコントロールセンター」です。
そこに、ダメージを受けたのに生きている私は、もっと「自分の命を大切」に、「宝物のように感謝」しなければならないと思いました。
この体験が、同じように悩む誰かの、希望の光となることを願っています。

鍼灸治療
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